日本で食品の値上がりが相次ぐ…入札王データで輸入小麦の買入価格を調査
2022年に入ってから、日本では食材や生活必需品などの値上げラッシュが続いています。
その中でも食品の値上げについては累計2万品目を突破したそうです。(2022年8月31日時点)
最近では、マクドナルドでは9月30日、吉野家は10月1日、ミスタードーナツは11月25日より商品の値上げをすると発表がありました。
昨年までの食品の値上げについては食用油価格の高騰がおもな理由でしたが、値上げした企業・食品品目ともに少なく、影響は限定的でした。しかし今年は、食用油や小麦などの食品の原材料に加えて、原油高騰にともなう包装資材・容器、物流費の高騰、急激な円安が重なり、影響が拡大しているのだそうです。
そして10月には、年内最多の6,500品目の値上げを予定していると言います。
参考:帝国データバンク
こちらの図を見てわかる通り、2022年の食品値上げ2万品目のうち、約3分の1が10月に集中しています。
帝国データバンクが2022年9月1日にまとめた「食品値上げによる家計支出額の影響」についての試算では、食品値上げによる1世帯の家計負担額は、1カ月で平均5,730円、年間で68,760円も増加することがわかったそうです。
この食品の値上がりはいつまで続くのでしょうか。
政府では、どのような対策が考えられているのか調べてみました。
物価高騰における政府の対策について
岸田総理は、9月8日の物価高騰への政府の対応等についての会見でこのように述べています。
岸田総理:
まず、食料品について、輸入小麦の政府売渡価格を10月以降も据え置き、秋以降のパンや麺などの値上がりを抑えてまいります。さらに、配合飼料の価格についても、畜産農家が支払う飼料代負担を、10月からの第3四半期も、現在と同程度の水準に据え置くよう支援を拡充し、卵、牛肉、また豚肉、こうした価格への影響、これを軽減してまいります。
引用:首相官邸ホームページ/物価高騰への政府の対応等についての会見
食料品の価格高騰対策として、小麦、配合飼料の価格を現在と同程度の水準に据え置くそうです。
配合飼料というのは、牛や豚、鶏、魚類などの餌として、トウモロコシ、マイロ、麦、ふすま、粕などの原料を配合・加工して、栄養がバランス良く調整された飼料を指します。
現在、飼料でとくに問題とされているのが、トウモロコシの需要向上による価格高騰です。
小麦について、日本では小麦粉の約9割が外国産の輸入小麦から作られているそうです。
そして、政府が輸入小麦を買い付けて業者へ売り渡す、政府売渡価格というものがあります。
以前まで輸入小麦の売渡価格は年間を通じて固定でしたが、2007年4月から国際相場変動の影響を緩和するため、年2回価格改定を行ない、直近6ヶ月間の平均買付価格をベースに計算されるようになりました。
この輸入小麦について、もう少し深く調査していきたいと思います。
輸入小麦の流通経路
日本における小麦粉の約9割を占める輸入小麦。
国内でどのように流通しているか簡単にご説明いたします。
① アメリカ、カナダ、オーストラリア産の輸入小麦を政府が買い付け
輸入小麦を政府が買い付けます。
② 輸入小麦を国内の製粉業者へ売り渡して小麦粉にする
固い表皮に被われている小麦はそのままでは食べることができないので、小麦粉へ加工するため国内の製粉業者に売り渡します。
③ パン・麺・菓子などの食品メーカーに小麦粉を卸す
食品メーカーでは、小麦粉を加工して製品が製造されます。
④ 食品メーカーの製品が消費者に届く
スーパーなどの小売業者を通じて、私たちの手元に届きます。
輸入小麦が加工されて私たちに届くまで、このような経路を辿ります。
この流通経路を頭に入れつつ、小麦・小麦粉の落札価格について調査していきたいと思います。
入札王のデータで見る輸入小麦の価格推移
2021年、2020年頃と比べて2022年現在の価格はどのようになっているのでしょうか。
入札王で「輸入小麦買入委託契約」「小麦粉供給契約」とキーワードを入れて検索し、価格を比べてみました。
<データA>
●輸入麦買入委託契約食糧小麦アメリカ産DNS18,248トン
開札日:2020年3月18日
発注機関:農林水産省
落札会社:CZL株式会社
落札価格:¥531,473,000
●輸入麦買入委託契約食糧小麦アメリカ産DNS18,325トン
開札日:2022年7月29日
発注機関:農林水産省
落札会社:CZL株式会社
落札価格:¥1,173,697,925
DNSはダーク・ノーザン・スプリング(Dark Northern Spring)という銘柄で、おもにパン・麺に使われるものです。
どちらも同じくらいの量ですが、2年前に比べて倍程度の値上がりがありました。
<データB>
●輸入麦買入委託契約食糧小麦アメリカ産DNS25,100トン
開札日:2019年12月18日
発注機関:農林水産省
落札会社:CZL株式会社
落札価格:¥825,338,200
●輸入麦買入委託契約食糧小麦アメリカ産DNS25,910トン
開札日:2022年5月24日
発注機関:農林水産省
落札会社:丸紅株式会社
落札価格:¥1,953,303,080
こちらも同じくアメリカ産DNSの銘柄の買入委託案件です。
2019年→2022年で倍以上の値上がりになっていました。
<データC>
●令和2年度下半期小麦粉供給契約(33,000kg)
開札日:2020年9月15日
発注機関:法務省
落札会社:株式会社田中そば製粉
落札価格:¥2,316,600
●令和4年度上半期小麦粉供給契約(30,000kg)
開札日:2022年4月1日
発注機関:法務省
落札会社:株式会社田中そば製粉
落札価格:¥2,689,200
法務省、府中刑務所において小麦粉を供給契約する案件です。
流通経路では②と③の間で、製粉業者から小麦粉を購入するところにあたります。
2020年→2022年、供給量が3トン減っているのですが価格は上がっていますね。
このように入札王のデータからも相場が上がっていることがわかります。
値上がりはいつまで?
では、いつまで輸入小麦の価格高騰が続くのでしょう。
「政府売渡価格を10月以降も据え置く対策を取る」と岸田総理の言葉通り、2022年9月9日に農林水産省で緊急措置の発表がありました。
2022年3月以降、急騰していた輸入小麦の価格は、6月以降、アメリカの生産状況の改善、ウクライナからの穀物輸出の再開などで概ね元の水準に戻ったそうです。
さらに価格が改定される10月期の政府売渡価格は、直近6ヶ月間の平均買付価格ではなく、令和4年4月期と同じ価格を適用するということです。
政府が対策をすることで、食品の値上げラッシュは10月でピークアウトすると見られます。しかし、為替の円安問題がどのように動いていくかという不安要素はまだ残りますので、今後も注視していきたいですね。
いかがでしたでしょうか。
今回は食品の値上げ、輸入小麦について調査をいたしました。
このように世の中はつねに変わっていきます。
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